ラーベの感謝状

『南京安全区トウ案』 第1号文書(Z1)

南京安全区国際委員会
寧海路5号

1937年12月14日
南京日本軍司令官殿

     拝啓
     貴軍の砲兵部隊が安全区に攻撃を加えなかったことにたいして感謝申し上げるとともに、安全区内に居住する中国人一般 市民の保護につき今後の計画をたてるために貴下と接触をもちたいのであります。
     国際委員会は責任をもって地区内の建物に住民を収容し、当面 、住民に食を与えるために米と小麦を貯蔵し、地域内の民警の管理に当たっております。
     以下のことを委員会の手でおこなうことを要請します。

    1. 安全区の入口各所に日本軍衛兵各一名を配備されたい。
    2. ピストルのみを携行する地区内民警によって地区内を警備することを許可されたい。
    3. 地区内において米の販売と無料食堂の営業を続行することを許可されたい。
      • a われわれは市内の他の場所に米の倉庫を幾つかもっているので、貯蔵所を確保するためにトラックを自由に通 行させて頂きたい。
    4. 一般市民が帰宅することができるまで、現在の住宅上の配慮を続けることを許されたい。(たとえ、帰宅できるようになったとしても、多数の帰るところもない難民の保護をすることになろう。)
    5. 電話・電灯・水道の便をできるだけ早く復旧するよう貴下と協力する機会を与えられたい。

     昨日の午後、多数の中国兵が城北に追いつめられた時に不測の事態が展開しました。そのうち若干名は当事務所に来て、人道の名において命を助けてくれるようにと、我々に嘆願しました。委員会の代表達は貴下の司令部を見つけようとしましたが、漢中路の指揮官のところでさしとめられ、それ以上は行くことができませんでした。そこで、我々はこれらの兵士達を全員武装解除し、彼らを安全区内の建物に収容しました。現在、彼らの望み通 りに、これらの人びとを平穏な市民生活に戻してやることをどうか許可されるようお願いします。
     さらに、われわれは貴下にジョン・マギー師(米人)を委員長とする国際赤十字南京委員会をご紹介します。この国際赤十字会は、外交部・鉄道部・国防部内の旧野戦病院を管理しており、これらの場所にいた男子を昨日、全員武装解除し、これらの建物が病院としてのみ使用されるように留意いたします。負傷者全員を収容できるならば、中国人負傷者を全員外交部の建物に移したらと思います。
     当市の一般市民の保護については、いかなる方法でも喜んで協力に応じます。
      敬具

南京国際委員会            
委員長 ジョン・H・D・ラーベ
( John H. D. Rabe)

南京安全区国際委員会         
寧海路5号          
電話 31961−32346−31641

『日中戦争史資料9』 P120