俘虜処罰法(昭和18年)

俘虜処罰法(昭十八、三、九/法律四一)

朕帝国議会の協賛を経たる明治三十八年第三十八号改正法律を裁可し茲に之を公布せしむ

俘 虜 処 罰 法

第一条

本法は俘虜にして罪を犯したるものに之を適用す
  

第二条 多衆集合して暴行又は脅迫を為したる者は首魁は死刑又は無期の懲役若は禁錮に処し其の他の者は無期又は一年以上の懲役又は禁錮に処す
前項の罪を犯す目的を以て其の予備又は陰謀を為したる者は一年以上の有期の懲役又は禁錮に処す
  
第三条 俘虜を監督し、看守し又は護送する者を殺したる者は死刑に処す
前項の罪を犯す目的を以て其の予備又は通謀を為したる者は二年以上の有期の懲役又は禁錮に処す
 
第四条 俘虜を監督し看守し、又は護送する者を傷害し又は之に対し暴行若は脅迫を為したる者は死刑又は無期若は二年以上の懲役若は禁錮に処す
党与して前項の罪を犯したる者は首魁は死刑又は無期の懲役若は禁錮に処し其の他の者は死刑又は無期若は三年以上の懲役若は禁錮に処す
前二項の罪を犯し因て人を死に到したる者は死刑に処す
 
第五条 俘虜を監督し、看守し又は護送する者の命令に反抗し又は之に服従せざる者は死刑又は無期若は一年以上の懲役若は禁錮に処す
党与して前項の罪を犯したる者は首魁は死刑又は無期の懲役若は禁錮に処し其の他の者は死刑又は無期若は二年以上の懲役若は禁錮に処す
 
第六条 俘虜を監督し、看守し又は護送する者を其の面前に於て又は公然の方法を以て侮辱したる者は五年以下の懲役又は禁錮に処す
 
第七条 党与して逃亡したる者は首魁は死刑又は無期若は十年以上の懲役若は禁錮に処し其の他の者は無期又は一年以上の懲役又は禁錮に処す
 
第八条 第二条第一項、第三条第一項、第四条第一項及第二項竝に前条の未遂罪は之を罰す
 
第九条 宣誓解放を受けたるもの其の宣誓に背きたるときは死刑又は無期若は七年以上の懲役若は禁錮に処す
前項の者兵器を執り抗敵したるときは死刑に処す
 
第十条 逃走せざる旨の宣誓を為し之に背きたる者は一年以上の有期の懲役又は禁錮に処し其の他の宣誓に背きたる者は十年以下の懲役又は禁錮に処す
第十一条 不従順の行為を目的として党を結びたる者は首魁は一年以上十年以下の懲役又は禁錮に処し其の他の者は六月以上五年以下の懲役又は禁錮に処す
 
第十二条 第七条の規定は再び俘虜と為りたる者の前に俘虜たりしとき犯したる罪には之を適用せず
 

附則
本法は公布の日より之を施行す



『俘虜に関する諸法規類集(十五年戦争極秘資料集11)』 P54
茶園義男編・解説(不二出版)