戦数肯定論
【 モイラー(Christian Meurer) 】

※Christian Meurer, Die Haager Friedens-Konferenz,2,pp7-(田岡良一の要約による)
モイラーは Kriegsr<a>son oder milit<a>rische Notwendigkeit として「戦藪」と「軍事的必要」とをシノニムとして用ひる(八頁)。彼は、軍事的必要を(一)Gesetzespolitikと(二)Rechtsdogmatikとの両方面から研究する。
 (一)軍事的必要は、戦争法関係の條約を作るに当つて、充分の顧慮を梯はれることを必要とする。條約は戦争の目的を達する爲に必要ならざる加害行爲を禁止するが如く作らるべきであり、其れ以上に亙つて(戦争の目的を達する爲の必要を阻害して迄も)交戦國の行動に制限を加へようとする條約は失敗に帰せねばならぬ(九-一二頁)。
 (二)若し実定法規が軍事的必要を阻害するが如く作られてある場含には、軍事的必要は、実定法の設ける障壁の前に停止することを要しない。リューダーの言ふが如く、戦数と戦争法との関係は、刑法上の緊急状態が刑法に對する関係と同一である。軍隊の生存の維持の爲に、又は他の方法によつては避け難き危険を回避する爲に必要な場合、又は其れ自身違法ならざる軍事行動を遂行し、又は其の成功を確保する爲に必要なる場含に執られる軍事的措置は、戦争法の侵犯と【104】ならない(一二-一五頁)。

田岡良一『戦争法の基本問題』P103-104