戦数否定論
【 筒井若水 】

jus in belloの逸脱は、別 に、戦時復仇としてもなされるが、復仇が相手側の客観的な戦時法違反行為への対応となされ、少なくとも、相当性の限界があるのに対し、この場合は、いわば、主観的な必要・緊急事由のみからなされ、合理的限界も示されてない。もともと、戦時国際法は、軍事的な必要と人道確保の必要とのバランスの上に成り立っており戦争法規には、最初から必要事由が組み込まれていると見れば、とりたててこれを認めるまでもない。緊急事由は、自衛権・緊急行為として、別 途用意されていると見ることも可能である。これが行き着くところ、戦時法そのものが否定される結果 になり得ることも、正当な概念・慣行として、否認される事由になる。これまで援用されていたケースが単に違法を糊塗するためのものであったと見られる。(2度の大戦の諸例)このことからも、これを逸脱事由と見るべきではないとの立場が説得性を持つ。最も、前述諸条約のように、明文規定が有れば、それから解釈できる範囲で、これが認められることも言うまでもない。 (筒井若水)

『国際関係法辞典』国際法学会編、三省堂(1995年 8月第1刷発行)