戦数否定論
【 オッペンハイム(Oppenheim) 】

※オッペンハイム『國際法 第二巻』67・69齣(第5版によれば、P187,193-194)
「独逸の法諺 Kriegsraeson geht vor Kriegsmanier は、戦争方法が未だ慣習法及び國際條約より成る戦争法規によつて規整せられずして、只戦争の習はし(Manier, Brauch)によつてのみ規整せられて居た時代に発生し、認められたものであり、其の言はんとする所は、戦時の必要は戦争の習はしを破る、と言ふことである。然るに今日戦争方法は最早や習はしによつてのみ規整せられずして、大部分は法規によつて−−國際條約又は一般的慣習によつて承認せられたる確固たる規則によつて−−規整せられる。此等の條約及び慣習上の規則は、自己保存の必要ある場含に適用なきが如く作られて居るものを除き、必要によつて破られ得ない。故に例へば毒を施せる武器及び毒物の使用を禁止し、又敵軍に属する個人を背信的に殺傷することを許さずとする規則は、たとへ之を破ることが重大なる危険を避け又は戦争の目的を達成する結果を齎す場含と難も、拘束力を失はない。海牙陸戦條規の第二十二條は明白に、交戦者が敵を害する手段を選擇する権利は無制限にあらず、と規定する。そして此の規則は必要の場含にも拘束力を失はない。軍事的【108】必要の場含に無視することが許されるのは、戦争法規ではなくして、たゞ戦争の習はしである。Kriegsraeson geht vor Kriegsmanier, but not vor Kriegsrecht!」(六九齣)。」

田岡良一『戦争法の基本問題』P107-108