陸戦の法規慣例に関する条約
【第1条】軍隊に対する訓令
【第2条】本条約の適用
【第3条】 違 反
【第4条】1899年の条約
【第5条】 批 准
【第6条】非記名国
【第7条】効力の発生
【第8条】 廃 棄
【第9条】批准書寄託の帳簿

留 保


● 陸戦の法規慣例に関する条約 ●

署  名 : 1907年10月18日(ヘーグ)
効力発生: 1910年 1月26日
日  本 : 1912年 2月12日
        (1911年11月 6日批准、12月13日批准書寄託、1912年 1月13日公布・条約第4号)
当事国数 : 44か国(含:台湾〔中華民国〕)

 独逸皇帝陛下普魯西国皇帝陛下(以下締約国元首名略)は、平和を維持し且諸国間の戦争を防止するの方法を講すると同時に、其の所期に反し避くること能はさる事件の為兵力に訴ふることあるへき場合に付攻究を為すの必要なることを考慮し、斯の如き非常の場合に於ても尚能く人類の福利と文明の駸々として止むことなき要求とに副はむことを希望し、之か為戦争に関する一般 の法規慣例は一層之を精確ならしむるを目的とし、又は成るへく戦争の惨害を減殺すへき制限を設くるを目的として、之を修正するの必要を認め、千八百七十四年の比律悉会議の後に於て、聰明仁慈なる先見より出てたる前記の思想を体して、陸戦の慣習を制定するを以て目的とする諸条規を採用したる第一回平和会議の事業を或点に於て補充し、且精確にするを必要と判定せり。
 締約国の所見に依れは、右条規は、軍事上の必要の許す限、努めて戦争の惨害を軽減するの希望を以て定められたるものにして、交戦者相互間の関係及人民との関係に於て、交戦者の行動の一般 の準縄たるへきものとす。
 但し、実際に起る一切の場合に普く適用すへき規定は、此の際之を協定し置くこと能はさりしと雖、明文なきの故を以て、規定せられさる総ての場合を軍隊指揮者の擅断に委するは、亦締約国の意思に非さりしなり。
 一層完備したる戦争法規に関する法典の制定せらるるに至る迄は、締約国は、其の採用したる条規に含まれさる場合に於ても、人民及交戦者か依然文明国の間に存立する慣習、人道の法則及公共良心の要求より生する国際法の原則の保護及支配の下に立つことを確認するを以て適当と認む。
 締約国は、採用せられたる規則の第一条及第二条は、特に右の趣旨を以て之を解すへきものなることを宣言す。
 締約国は、之か為新なる条約を締結せむことを欲し、各左の全権委員を任命せり。
 (全権委員名略)

 因て各全権委員は、其の良好なりと認められたる委任状を寄託したる後、左の条項を協定せり。




【第1条】(軍隊に対する訓令)

 締約国は、其の陸軍軍隊に対し、本条約に附属する陸戦の法規慣例に関する規則に適合する訓令を発すへし。




【第2条】(本条約の適用)

 第一条に掲けたる規則及本条約の規定は、交戦国か悉く本条約の当事者なるときに限、締約国間にのみ之を適用す。




【第3条】(違反)

 前記規則の条項に違反したる交戦当事者は、損害あるときは、之か賠償の責を負ふへきものとす。交戦当事者は、其の軍隊を組成する人員の一切の行為に付責任を負ふ。




【第4条】(1899年の条約)

 本条約は、正式に批准せられたる上、締約国間の関係に於ては、陸戦の法規慣例に関する千八百九十九年七月二十九日の条約に代るへきものとす。千八百九十九年の条約は、該条約に記名したるも、本条約を批准せさる諸国間の関係に於ては、依然効力を有するものとす。




【第5条】(批准)

 本条約は、成るへく、速に批准すへし、批准書は、海牙に寄託す。
 第一回の批准書寄託は、之に加りたる諸国の代表者及和蘭国政府外務大臣の署名したる調書を以て之を証す。
 爾後の批准書寄託は、和蘭国政府に宛て、且批准書を添附したる通告書を以て之を為す。
 第一回の批准書寄託に関する調書、前項に掲けたる通告書及批准書の認証謄本は、和蘭国政府より、外交上の手続を以て、直に之を第二回平和会議に招請せられたる諸国及本条約に加盟する他の諸国に交付すへし。前項に掲けたる場合に於ては、和蘭国政府は、同時に通 告書を接受したる日を通知するものとす。




【第6条】(非記名国)

 記名国に非らさる諸国は、本条約に加盟することを得。
 加盟せむと欲する国は、書面を以て、其の意思を和蘭国政府に通告し、且加盟書を送付し、之を和蘭国政府の文庫に寄託すへし。
 和蘭国政府は、直に通告書及加盟書の認証謄本を爾余の諸国に送付し、且右通 告書を接受したる日を通知すへし。




【第7条】(効力の発生)

 本条約は、第一回の批准書寄託に加りたる諸国に対しては、其の寄託の調書の日附より六十日の後、又其の後に批准し又は加盟する諸国に対しては、和蘭国政府か右批准書又は加盟の通 告を接受したるときより六十日の後に、其の効力を生するものとす。




【第8条】(廃棄)

 締約国中本条約を廃棄せむと欲するものあるときは、書面を以て、其の旨和蘭国政府に通 告すへし。和蘭国政府は、直に通告書の認証謄本を爾余の諸国に送付し、且右通 告書を接受したる日を通知すへし。
 廃棄は、其の通告書か和蘭国政府に到達したるときより一年の後、右通告を為したる国に対してのみ、効力を生するものとす。




【第9条】(批准書寄託の帳簿)

 和蘭国外務省は、帳簿を備へ置き、第五条第三項及第四項に依り為したる批准書寄託の日並加盟(第六条第二項)又は廃棄(第八条第一項)の通 告を接受したる日を記入するものとす。
 各締約国は、右帳簿を閲覧し、且其の認証抄本を請求することを得。


 右証拠として、各全権委員本条約に署名す。
 (全権委員署名略)



======== 留 保 =======

  •  独逸国 附属規則第四十四条を留保す。墺地利洪牙利国 千九百七年八月十七日の総会議に於て為したる宣言を留保す。
  • 日本国 第四十四条を留保す。
  • 「モンテネグロ」国 本条約附属規則第四十四条に関して表明し、且千九百七年八月十七日の第四回総会議議事録に記入せられたる留保を為す。
  • 露西亜国 本条約附属規則第四十四条に関して表明し、且千九百七年八月十七日の第四回総会議議事録に記入せられたる留保を為す。
  • 土耳其国 第三条を留保