佐藤和男「南京事件と戦時国際法」批判01 はじめに

佐藤和男「南京事件と戦時国際法」批判 戦時国際法
佐藤和男「南京事件と戦時国際法」批判
佐藤和男「南京事件と戦時国際法」批判 総目次
1.はじめに
2.戦数論
3.便衣兵殺害論
4.捕虜殺害論 オッペンハイム所論について
5.捕虜殺害論 事例検討
6.まとめ
7.参考資料

はじめに

佐藤和男 南京事件と戦時国際法
佐藤和男「南京事件と戦時国際法」『正論』2001年3月

 佐藤和男氏は国際法学者で、拓殖大学助教授、国連本部特別研究員、明治学院大学教授、青山学院大学教授を歴任し、青山学院大学で名誉教授に叙される。その他、一般的なプロフィールについてはwikipediaを参照してほしい。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%90%E8%97%A4%E…

 佐藤氏は産経新聞社が発行する月刊誌『正論』2001年3月号で、「南京事件と戦時国際法」と題する論文を発表した。それまでに、国際法学者が南京事件に関して直接言及することは無かったので、国際法学者の所見を見ることができる珍しいケースだと言える。

 ただし、論文を発表した媒体が『正論』という右派論壇誌であること、佐藤氏が監修した『世界がさばく東京裁判 : 85人の外国識者が語る連合国裁判』(終戦五十周年国民委員会編、1996年)は、東京裁判に批判的な内容であり、同書の編集・刊行主体である「終戦五十周年国民委員会」は、後の日本会議となる2団体から派生した団体であることを考慮すると、当然に南京事件否定論に傾斜した議論を展開すると予想された。

 佐藤論文の概要だが、文章の章立てとしては、「一、問題状況」、「二、支那事変と国際法の適用」、「三、捕虜の取扱いに関する法規」、「四、”南京事件”関連の重要法規」、「五、結論的所見」と5つの章に分れている。
 このうち「二、支那事変と国際法の適用」、「三、捕虜の取扱いに関する法規」、「四、”南京事件”関連の重要法規」は、概ね南京事件当時に摘要される戦時国際法(国際人道法)の概説となっている。
 南京事件で争点となる部分を論じているのは「五、結論的所見」である。ここで取り上げている争点は大きく分けて便衣兵殺害問題、捕虜殺害問題の2点となる。

 以下、この佐藤氏の「南京事件と戦時国際法」について、①戦数論、②便衣兵殺害論、③捕虜殺害論という三つの論点にまとめて検討したいと思う。

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